星に願いを

 僕が初めて触れた神話は、父が買ってくれた星座の神話でした。真っ黒な宇宙にきらきらと輝く星々の写真が大好きで、オリオン座やおおぐま座カシオペア座が特にお気に入りでした。
 幼い頃の僕にとって神話とは「星の話」であり「宇宙の話」だったのです。だから、宇宙には神様がいるものだと思っていました。
「ナイト・テイル」のプロットを考える時も、ごく自然に「最後は宇宙の話にしよう」と思いつきました。宇宙に神がいるかどうか、という命題は全く頭をよぎりませんでした。4巻執筆中に父が倒れた時、冒頭に献辞を入れてもらい、一緒にリハビリをがんばろうと伝えるつもりでいました。結局、父は駆け足で空の彼方に旅だってしまいましたが、あるいは彼は、はやぶさを助けにいこうとしていたのかも、と今になって思います。人の好い父の事ですから、「ちょっと手伝って」と言われれば喜んで飛んでいったに違いありません。
 手術の日、最後に交わした握手の力強さを今でも憶えています。あの日受け取ったものを、いつの日か、僕も誰かに託して旅立ちたい。――はやぶさのように。


 今回、宇宙の神話に新たな1ページが記されていく瞬間に立ち会えたことを嬉しく、また誇りに思います。