お題もの書き

"Dance with you"

「ああ、メアリー、ここにいたのか」
「何かご用でしょうか、だんな様」
「えーと、用っていうか……上着をどこにやったかな」
「だんな様が今テーブルに置かれましたわ」
「ああそうだった……ええと、懐中時計は」
「上着のポケットに入れていらっしゃいます」
「あー」
「帽子ならホールの東側の机の上ですわ」
「……」
「だんな様、何か私におっしゃりたいことがあるのでは」
「ああ……その、ちょっとダンスの練習につきあってくれないかな」
「え……その、ソフィア様はよろしいのですか？」
「彼女、すぐに足を踏むから練習にならないんだ」
「それはだんな様のせいではないのでは」
「まあ、足を踏まれない練習ってことで」
「……わかりました。ワルツでよろしいですか？　だんな様」
「いいよ、ちょうど曲も変わった……ああ、そうだ」
「はい？」
「練習の間、『だんな様』はナシだ。ソフィアはそんなこと言わないからね」
「え……ウィリアム様、でよろしいのでしょうか……」
「様、もつけないな、彼女は」
「ええっ……う、ウィリアム……」
「Yes, lady, my fair...」

＃もの書き2005年10月のテーマ「ダンス」より。
蒼空かける氏のアイデアを受けての習作。