加納朋子

 さあ、いよいよもってネタが無くなってまいりました。
 このところとにかく日記を更新するのがやっととゆー感じです。コメントにレスもつけられない有様で申し訳ありません。
 取りあえず数日の間は僕の本来の土俵であるミステリ畑の話しが続くかと思いますがご容赦を。


 僕にとって加納朋子の作品は「本当に苦しいときの栄養剤」です。何もかも使い果たして早急に「栄養」を補給しなければならない時、真に「天才」と呼ぶべき才能に触れなければならないと感じる時、最後に頼るのが彼女の作品なのです。
 デビュー作である「ななつのこ」を一読すればおわかりの通り、加納朋子の基本は「殺人なきミステリ作家」であり「読み切り連作」な訳ですが、特筆すべきは女史の類い希なる「構成力」でしょう。各話に仕込まれた伏線が最後の一話の中でひと繋がりの話となり、「本当の」真相が明らかになっていく様はまさに「職人芸」の領域です。そのためか、アーロン・エルキンズほどではありませんが寡作の人で、これまで年に1作のペースでしか発表されていません。しかしその分、安定して良作を書き続けておられます。
 創元推理文庫から出ている三作はいずれも「日常の中の『あれっ』と思うようなちょっとした出来事が実は……」という感じの連作短編で構成されています。殺人事件は一件たりともおきません。かといって鼻につくほど説教臭くもなく、女性のミステリ作家に特有のフェミニズムも感じません。ほんわかまったりと話しは進んでいき、最後はちゃんと落ちをつけてくれます。
 個人的なお勧めは「ガラスの麒麟」「いちばん初めにあった海」「掌の中の小鳥」でしょうか。「ガラスの麒麟」では珍しく殺人事件が起き、女史の作品の中では最も「ミステリらしい」ものになっています。